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007 ドクター・ノオ』(ゼロゼロセブン[1] -、Dr. No)は、イアン・フレミングの長編小説007シリーズ第6作。また1962年公開、テレンス・ヤング監督のスパイアクション映画。007シリーズ映画化第1作。ジェームズ・ボンド役をショーン・コネリーが演じた初の作品である。日本初公開は[1963年6月で、当時の邦題は『007は殺しの番号』。

小説 編集

イアン・フレミングの小説007シリーズ長編第6作。1958年、ジョナサン・ケープ社より出版された。日本では1959年に早川書房から井上一夫訳によりハヤカワ・ポケット・ミステリで発売された。

あらすじ 編集

スメルシュのローザ・クレッブに倒され、6ヶ月の入院生活を送った後復帰したイギリス秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、消息を絶ったジャマイカの責任者ストレングウェイズの調査を命ぜられた。ジャマイカへ飛んだボンドは、ストレングウェイズが調べていたジュリアス・ノオ博士を探るうち、ノオ博士がソビエト連邦に通じてアメリカの誘導ミサイル実験を妨害していることを知る。

ストーリー 編集

ロケット妨害電波の調査をしていた英国諜報部ジャマイカ支局長のジョン・ストラングウェイズとその助手が何者かに殺された。ボンドはその事件を調査するためジャマイカへと飛ぶ。事件を調べる後、謎の人物ドクター・ノオが黒幕である事を知る。

スタッフ 編集

キャスト 編集

興行成績 編集

当初は『007 サンダーボール作戦』が第1作になるはずだったが、著作権に関する訴訟問題から暗礁に乗り上げ、SF色のある第6作『ドクター・ノオ』が選ばれた。結果的に、米ソの宇宙開発競争や、偶然にも公開時に起きたキューバ危機などから、時事性を帯びた作品となった[2]

シリーズ第1作である本作は、100万ドルというシリーズ中最も低予算で製作されたが、6000万ドルに近い興行収入を上げ、1962年の映画の世界興行成績で第1位となった[3]。日本では、公開された1963年度の外国映画配給収入で、ベスト10には入らなかった。

キャラクター、キャストなど 編集

ボンド役の候補には、ケーリー・グラントパトリック・マクグーハン、後に三代目ボンドとなるロジャー・ムーアなどが挙がっていた。ボンドの初登場シーンは、ロンドンのアンバサダー・クラブ(Le Cercle,Les Ambassadeurs London)のカジノである。そして此処でボンドが言う、"Bond, James Bond" は、以後シリーズで恒例の名乗り方となる。

ドクターノオは、原作者イアン・フレミングの従兄弟クリストファー・リーを意識して書かれたと言われている。そして、そのクリストファー・リーは、『007 黄金銃を持つ男』で悪役スカラマンガを演じている。その後、ドクター・ノオはパロディ版『カジノ・ロワイヤル』(犯罪組織の首領でル・シッフルの上司、ただし名前はノオではなくノア)、アニメ「JAMES BOND Jr.」(日本未公開)、海外製ゲームソフト「ゴールデンアイ ダーク・エージェント」などに再登場し、それぞれ対決相手として、引退したボンド、ボンドの甥、ボンドの元同僚で悪に転じたスパイと戦っている(部下の殺し屋にはオナトップなどがいるらしい)。

ドクター・ノオの部屋に置かれていた絵画を見て、ボンドが驚く。この絵画は、ゴヤの『ウェリントン公爵の肖像』で、実物は1961年(映画公開前年)、ロンドンのナショナルギャラリーから盗まれていた。犯人はドクター・ノオだったというお遊び。実際に盗んだのはケンプトン・バントンという人物で、1965年になってこの絵を返還し、警察に出頭した。このシーンは本映画に冷淡だった批評家にも絶賛された[2]。この出来事のパロディなのか、ウェリントン公爵は第15作『リビング・デイライツ』の終盤ボンドの命を救う事になった。

ウルスラ・アンドレス演ずるハニー・ライダーが白いビキニ姿で海から上がってくるシーンは、007シリーズを通しても有名なシーンの一つで、2003年にBBCのチャンネル4が行った投票では、「最もセクシーなシーン」に選ばれた。このときアンドレスが着ていたビキニは、2001年2月にクリスティーズのオークションに出品され、プラネット・ハリウッドの共同創業者ロバート・アールによって3万5千ポンドで落札された。

銃の専門家として、ピーター・バートン演ずるブースロイド少佐が登場する。ブースロイド少佐役は、映画第2作『ロシアより愛をこめて』からデスモンド・リュウェリンに変わり、次の『ゴールドフィンガー』からQと呼ばれるようになる。なお、ブースロイドの名は実在の銃器研究家ジェフリー・ブースロイド[4]から拝借したものである。この人物は、原作者のフレミングに手紙を書いて、「.25口径のベレッタは女性用の銃だ」と意見した。ボンドの銃が.32口径のワルサーPPKに変更されたのは、その意見が反映されたのだという[5]

CIAエージェントのフェリックス・ライターは、原作では第1作『カジノ・ロワイヤル』から登場し、しばしばボンドに協力する盟友であるが、実は『ドクター・ノオ』には登場していない。本作でライターを演じたジャック・ロードは、後にテレビシリーズ『ハワイ5-0』のスティーブ・マクギャレットが当たり役となるアメリカの俳優である。ライターは、映画版でも原作同様しばしば登場することになるが、俳優は毎回異なっており。二度演じたのは『死ぬのは奴らだ』と『消されたライセンス』のデビッド・ヘディスンと、『カジノ・ロワイヤル』と『慰めの報酬』のジェフリー・ライトのみである。

原作では第2作の『死ぬのは奴らだ』もジャマイカを舞台にしており、ストラングウェイズやクオレルは、そこで一度登場したキャラクターであった。映画の『死ぬのは奴らだ』は製作順序が後になったうえ、舞台も変更されてしまったが、クオレルの息子クオレル・Jr.が登場する。空港に登場するフォトグラファーを演じているのは、マーゲリット・ルウォーズ。航空会社 BWIA の空港カウンター職員をしているところを、ヤング監督にスカウトされ出演が決まったが、実はミス・ジャマイカでもあった。ボンドを拉致しようとする運転手役のレジー・カーターは、彼女の義兄である。また、ボンドとライターが食事するバックで演奏している楽団は、ジャマイカのバイロン・リー&ドラゴネアズである[6]

ハニーと蟹、ボンドと烏賊の対決(蟹は空輸してみると冷凍されていて使い物にならず[6]、大イカの捕獲も無理だった。また蟹のシーンは、編集のピーター・ハントによると、あまりにもばかばかしかったらカットされたのだともいう[2]

初回上映時の邦題『007は殺しの番号』は、字幕を担当した映画翻訳家の高瀬鎮夫が進言して採用された[7]

ボンドはライターにスーツはどこの仕立てかを聞かれ、サヴィル・ロウ(ロンドンの高級仕立て屋街)と答えているが、実際に仕立てたのは、サヴィル・ロウに近いコンデュイット(コンジット)・ストリートに店を構えていたアンソニー・シンクレアであった。元もとは陸軍将校を顧客にしていたテーラーで、陸軍出身のヤング監督がその常連だったことから、撮影用のコネリーのスーツの仕立てを依頼された。また、コネリー着用のシャツは、ロンドンのジャーミン・ストリートに本店のある、1885年創業のターンブル&アッサー製。元もとはオーダー・メイドのシャツの店で、チャールズ皇太子ウィンストン・チャーチル御用達としても知られる[6]

呼び出しを受けたボンドが赴いたのは、某ビル内にあるユニバーサル貿易(Universal Exports)であった。これは、007シリーズの英国秘密情報部が使っている隠れ蓑の会社で、原作ではリージェンツ・パーク沿いのビルにあることになっている。映画では、ここでMが自分を MI7 (DVDの英語字幕では MI6 に変えられている)の部長だと述べており、実在のMI6ではない架空の組織となっている(映画で所属組織が MI6 となったのは、『ゴールデンアイ』からである)。ボンドはオフィスに入ると、自分の帽子を投げて奥にある帽子掛けに掛ける。これもシリーズ恒例のシーンとなり、帽子をかぶる習慣がすたれてからも、形を変えてしばしば登場した。1960年代中頃には、多くのバラエティ番組などで真似されたり、パロディ化されたりした。Mのオフィスを退出した後、ボンドの自宅のシーンがある。ボンドは、ドクター・ノオに1955年のドン・ペリニヨンを出され、1953年もののほうがいいと述べた(本映画シリーズで恒例となるスノビズムの始まりという指摘がある[2])。

ドクター・ノオは、中国の実在の犯罪組織トング(Tong)の元メンバー。原作ではその後独立し、ソ連を商売相手にアメリカの誘導ミサイル実験の妨害を行う。映画では、架空の組織スペクターの幹部。スペクター(SPECTRE)とは、SPecial Executive for Couter-Intelligence, Terrorism, Revenge, and Extrotion (防諜・テロ・報復・恐喝を目的とする特別執行機関)の略。英単語のspectre(幽霊。米語ではspecter)に掛けている(小説でスペクターが登場するのは、『サンダーボール作戦』からである)。ドクター・ノオは、映画ではミサイルだけでなくアメリカの月ロケットの妨害も企む。本作公開前年の1961年にケネディ大統領が、1960年代中に人間を月に着陸させると声明を行い話題になっていた。しかし、劇中に出てくる映像は、前段階の有人宇宙飛行に過ぎないマーキュリー計画のものである。

テレビドラマ『マグマ大使』の第21話「細菌を追え!!」で、冒頭に登場する聾唖者に偽装した三人組暗殺者の一連のシーンは、本作の「盲ねずみ」のシーンのパロディである。小林よしのりの漫画・アニメ『おぼっちゃまくん』に登場するセミレギュラーの敵、ドクター・モオは、このパロディである。

秘密兵器など 編集

本作では、後の作品のような奇抜な兵器はほとんど登場しない。特殊装備を施したボンドカーも、まだ登場しない。ボンドはレンタルした1961年型サンビーム・アルパインで、カーチェイスを行う。

  • ワルサーPPK(.32口径/7.65mm)。ボンドはベレッタM1919(.25口径/6.35mm)を使用していたが、前回の任務で作動トラブルため失敗を犯し、病院送りとなった。そのため、Mの命令で銃の専門家ブースロイドから、このワルサーを支給される。しかし、劇中でコネリーが使用していた銃はPPKではなく銃身の長いPPである(小道具担当はあまり銃器に詳しくないようで、スミス&ウェッソンがコルトであったり、PPKを持っているはずのボンドがデント教授をブローニングで殺害したりしている)。なお、前回の任務とは、原作では『ロシアより愛をこめて』のことなのだが、映画では製作順が逆になってしまったため、『ロシアより-』の結末は原作とは違っている。
  • ガイガーカウンター。調査に必要となり、ロンドンから送らせた。何か他のものに偽装しているわけではなく、正真正銘のガイガーカウンターである。
  • ドラゴン戦車。ドクター・ノオの島であるクラブ・キーを警備する車両。ドラゴンに偽装し、火炎放射器を装備している。ドクター・ノオは、島にドラゴンがいるという噂を流し、迷信深い漁師が近づかないようにした。
  • デント教授を射殺するシーンで、ボンドの靴下の位置がシーンによって上下する。また、途中でワルサーPPKからFN ブローニングM1910に変化する。

主題歌 編集

モンティ・ノーマンが基本を作った"James Bond Theme"がメイン・テーマとなった。そのモンティ・ノーマン・オーケストラのヴァージョンもあるが、ジョン・バリー・オーケストラのヴァージョンは、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌で、最高位13位を獲得している。アメリカでは、チャート入りを果たせなかったが、同サウンドトラック・アルバムは、「ビルボード」誌アルバム・チャートで最高位82位と健闘している。

日本語吹き替え 編集

役名 俳優 テレビ版 DVD新録版
ボンド ショーン・コネリー 若山弦蔵
ノオ ジョゼフ・ワイズマン 横森久 有本欽隆
ハニー ウルスラ・アンドレス 武藤礼子 弓場沙織
M バーナード・リー 今西正男 藤本譲
マニーペニー ロイス・マクスウェル 花形恵子 泉裕子
ライター ジャック・ロード 中田浩二 家中宏
デント アンソニー・ドーソン 寺島幹夫 稲葉実
ストラングウェイズ ティム・モクソン 緒方敏也
タロ ジーナ・マーシャル 津田京子
クオーレル ジョン・キッツミラー 飯塚昭三
Q ピーター・バートン 広瀬正志 塾一久
シルビア ユーニス・ゲイソン 山田美穂
スミス 糸博
ジョニー 若本紀昭
秘書 加川三起
戦車の男 伊武雅刀

テレビ版 - TBS『月曜ロードショー』1976年4月5日放送

DVD新録版 - 2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション

翻訳 - 平田勝茂

脚注 編集

  1. 日本でも「ダブルオーセブン」と言うようになったのは1970年代半ば以降
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 ジェームズ・チャップマン『ジェームズ・ボンドへの招待』利根由紀恵訳・中山義久監修、徳間書店、2000年 ISBN 978-4-19-861147-7
  3. List of highest-grossing films(ウィキペディア英語版)
  4. "The Handgun", Cassell, 1970(ISBN 978-0-304-93435-5)などの著作がある。
  5. デイリー・テレグラフ(ウェブ版)2004年9月6日
  6. 6.0 6.1 6.2 メイキング・オブ『ドクター・ノオ』DVD特別編・アルティメットエディション特典映像
  7. 『007 黄金銃を持つ男』劇場用パンフレット

関連項目 編集